感興のことば(ウダーナヴァルガ) 第20章 怒り 7偈、8偈、9偈

7 この人が力の有る者であっても、無力な人を耐え忍ぶならば、それを最上の忍耐と呼ぶ。弱い人に対しては、つねに(同情して)忍んでやらねばならぬ。

8 他の人々の主である人が弱い人々を忍んでやるならば、それを最上の忍耐と呼ぶ。弱い人に対しては、つねに(同情して)忍んでやらねばならぬ。

9 力のある人が、他人から謗られても忍ならば、それを最上の忍耐と呼ぶ。弱い人に対しては、つねに(同情して)忍んでやらねばならぬ。

(中村元訳「ブッダの真理のことば・感興のことば」岩波文庫より引用しました。)


*法津如来のコメント

本当は偶然ではないのでしょうが、今朝偶然目にした庄野英二の「鶏冠詩人伝」のあるページの次の文書を引用します。

(以下引用)
 主人公の少年は、横浜港の海岸沿いの道を歩いて、毎日、西洋人の子供も混じっている小学校に通う。少年は港に碇泊している汽船の喫水線に近い部分の洋紅色と海の藍色がたまらなく好きであった。
 少年は画を描くのが好きであったが、彼の持っている絵具では「洋紅色」と「藍色」がうまく出なかった。
 西洋人の友だちは、「洋紅色」と「藍色」が美しく発色する上等の絵具を持っていた。
 ある秋の日のひる休み、少年は魔がさして思わず二種の絵具を盗んでしまう。
 事件が発覚する。少年は体格のよい西洋人の子供たちに引き立てられて、別棟二階の受付の女の先生の部屋へ連れて行かれる。
 少年は、白いリンネルの服を着た受付の先生が好きであった。
 泣きじゃくっている少年を残して先生は授業に出かけて行く。
 少年はいつしかうたたねをしてしまっていた。やがて、先生が帰ってきた。先生はニッコリほほえんで、「あした必ず学校へくるのですよ」
 と優しく諭し、少年はこっくりをする。
 先生は、白いリンネルの服の上半身を窓からのりだして、銀色のはさみで一房の葡萄を摘みとり少年に与えた。
 少年は、その時の先生の美しい手と、白い粉をふいた葡萄の色が何年たっても鮮やかに思い出されるのであった。
(以上引用)

この文章は有島武郎著「一房の葡萄」の庄野英二の要約です。
https://www.aozora.gr.jp/cards/000025/files/211_20472.html


この文章を引用しましたのは、この若い女の先生の心が今回の三つ偈の意味を教えてくれるからです。