石法如来の特別寄稿:「穏やかな死」と穏やかな死(その5)

森田洋之氏の著書、『うらやましい孤独死』を読むと色々興味深い話がでています。著者の森田氏は変わった経歴の持ち主で、一般大学を6年ほど通った後に医科大学に入学、卒業後初期研修(2年間)後期研修(3年間)を経て夕張市に赴く決意をします。
 
財政破綻した夕張市に行くきっかけとなったのは、先に夕張市で医療に従事していた村上智彦医師の書いた『村上スキーム』という著書で、予防医学や終末医療など病院医療に頼らない患者中心の地域医療というものに感心を持ったことがきっかけだったようです。
 
実際に夕張市に赴いたのは、財政破綻して2年後の2009年だったようで、夕張市の医療は私立総合病院171床から市立診療所19床に大幅に縮小されていたと言います。
夕張市は、莫大な負債(年40億円規模の税収に対して、約600億円の負債)を抱え、医療体制にも潤沢な資金を提供できる状態にはなかったようです。
 
約4年間、夕張市の医療に関わって学んだことは、①、総病床数が171床から19床に激減した。②、高齢化率は(日本一の)50%を超えた。③、それにも関わらず、夕張市民の総死亡率は変わらなかった。④、病死は減った、その代わり老衰死が増えた。⑤、救急出動が半減した。⑥、一人当たり高齢者医療費が減った。等々・・・。
 
森田医師は、財政破綻して病院がなくなった夕張市で起こったことは、決して悪いことばかりではなかったと言います。むしろ、これから超高齢化社会を迎える日本の道しるべとなるような良いデータが出ていると言います。
 
この著書の、この文章を読んで私は自分の娘の嫁ぎ先であるスウェーデンのことを思い浮かべていました。どうやら、財政破綻した夕張市と医療の環境が似ているようです。
話でしか聞いていませんが、スウェーデンでは日本のように病院が乱立している訳ではなく、緊急を要する患者を除き診療は予約制だと言います。
 
まず電話で、緊急性・病状などを告げると看護師が今後の処置を回答してくれるそうです。普通は、そこで電話予約して通院する手はずを整えます。
スウェーデンの場合は、医療費が無料の範囲も広く有料になっても収入により上限が決められており、医療費の負担は日本よりずっと少ないと言います。
 
日本人のように、簡単に病院にかかることが出来ないので多少不安はあるようですが、スウェーデン在住も10年を越え、今ではすっかりそのシステムに慣れたようです。
 
本当に大事なのは、日本の医療システムです。日本全国の病床数は150万もあり、一人当たりの病床数は世界で最も多い部類に入ります。
そんな世界有数のベット数を持つ日本が、現在流行中の新型コロナ感染症で「医療崩壊」がなぜ叫ばれているのか?という疑問が生じます。
 
その答えは、日本の場合は医療提供を国が管理するのではなくて、各病院の裁量に任せている=「市場原理」に任せている・・・というところにあるようです。
市場原理に任せると、たしかに病院同士は競争関係にあります。だから、どこかの県のどこかの病院が医療崩壊しそうだと言っても、応援するために医師や機材を他県から搬入するなどということを行ったりしません。
 
新型コロナ騒動で有名になった人工呼吸器は全国推計で4万5千台あり全装備数の1%弱をコロナに、ECMO(エクモ)は全国に総数414台ありコロナでの使用率は2%と言われます。これだけ、連日日本中で大騒ぎしているのに使われている機材は、日本の全ての医療供給能力の数%であるというのが実情のようです。
 
ちなみに海外の先進国、欧州では病院と言えばほとんどが国立・公立で、国が医療全体を掌握・管理しているので病床の融通がきくようです。
つまり多くの主要先進国では、病院を警察や消防と同じ国の安全保障の一環と位置づけているのに、日本では各病院の自由経営に任せており、協力関係が構築されることなく緊急事態にも迅速に対応するように作られていないということです。


*法津如来のコメント

いよいよ、医療問題に入りましたね。